九九は算数力の根幹

 読み・書き・計算とよくいいます。算数の九九は小学2年生でもっとも山場といえます。しかし、学習指導要領や教科書通り、または昔ながらの方法に固執すると子供が見えなくなることがあります。
 九九は算数力の根幹です。子供が九九の式をみて答えが自然と浮かぶことがひとつの大きな目的になります。式をみて答えが自然と浮かぶことを自動化といいます。この自動化を優先することで、子供の自信(自己効力感)と自己有能感、そして保護者に安心を与えることができるのです。
この点から、教師の教え方ではなく、子供の立場から考えて指導することが大切です。
今回は、子供の立場から考えた九九の指導についてまとめます。

入学前に九九を覚えてもいいじゃない

ドラ九九は長年愛されてきた九九です。これを2歳から流して、3歳で歌えるようにする方法があります。今なら、youtubeで九九の歌でお気に入りがあれば、それが一番です。
九九の歌で覚えてしまう。次に学校で九九の意味を学ぶ。これは映画でいうサスペンス型。サスペンス型の授業といえるでしょう。しかし、九九に問題解決型学習を強要するとミステリー型の学習になります。

九九はミステリー型は、子供の九九暗記の取りこぼしの危険が高まります

九九を問題解決型学習で教えると、1のだんから9のだんまで1時間から2時間かけて指導することが多いものです。めあてもズバリ「・のだんの九九を覚えよう」に近い目標が立てられています。
九九で苦しいのは6・7・8・9の段です。ここを見通しを含めて1時間で覚えることは不可能です。理解するにしても見通しはいつもどおりの「・ずつふえる」「・を足すと、・を引くと」知らない九九でも求めることができる。図示する。このあたりで同じパターンの見通しとなります。
問題解決学習を教えるなら、いい流れです。しかし、子供の将来を見通したときに、九九の単元では確実に
九九を覚える>問題解決学習のはずです。
6・7・8・9に1時間以上増やしたい。しかし、どうしても2学期の後半の単元となり九九の定着ができない子供が生まれます。当たり前です。覚える時間が足りないのだから。
この授業のパターンの場合は、
1・2・3・4・5の段の1・2・5の段を定着させ、3、4で苦労して6・7・8・9の7のだんのあたりでナナとシチの言い方の混同で答えが間違え大混乱のパターンがお決まりです。
7かける7が29がシチシチシジュウクというと1かける7で7とこたえていたり、49が29や19になったりします。問題解決学習で進めた結果、九九学習に手間取った子供達が脱落し、自己効力感を失うのは明白です。2年生にそのような体験をわざわざさせる必要はないと思います。

九九はサスペンス型の学習過程がよい

 学校で習うときに、九九覚えた状態が一番子供にとってベストです。
映画でいうところの、サスペンス作品の流れです。
答えがわかっていながらも、その過程を追っていく流れです。
サスペンスとしての九九の学習過程の場合は、暗記する時間が九九の習い始めから終盤まで覚える時間に当てることができます。既に覚えている子供達にとっては、九九に詳しくなる、九九博士になろう!といえば、どんどん授業に引き込むことができます。
前述の見通しの・ずつへるが理解していれば、例えば5の段の場合
5かける1は5、では5かける0は?
「5減るから0です。」
ではさらに、0より少ない数をマイナスをつけて表現することを説明します。
5かける−1となるとどうなるだろう。と問いかけます。
そうすると「−5です」これを続けてマイナス9のだんまでの指導ができます。
0を中心とした対称的な数字の配列に美しさを感じ、もう中学1年生で習うことまで分かるようになったねと声かけをすれば、大喜び間違いなしです。
苦手とする子供達にも十分な時間も与えることができますし、展開を高度に運ぶこともできます。
九九を覚えた後に、同じような見通しが9回続く授業の法則性に気がつき、算数が好きになる子供も続出します。授業の型ということもあります。

覚える力が弱い子供ならば、九九を覚えるのは半分で良い

どのような指導をしていても、九九を覚えきれない子供は一定数存在します。
継次処理が苦手なタイプのお子さん、数唱が苦手なお子さん、聴覚、視覚優位も遠因にあります。
この場合は、中国式九九がよいかと思います。

1番簡単な1のだんは9つ覚えて2のだんは8つ
最難関の6・7・8・9の段になると覚える式は4・3・2・1つと減っていきます。
この場合は、子供のやる気も維持します。また九九の想起には時間がかかることがありますが、確実な答えにつなげることができます。
真面目に順番通りに、全て教えようとする教師の姿勢ではなく、子供の特性をしっかり把握して指導を組み合わせるのがいいのです。
しかし、この中国式の九九は想起にどうしても時間がかかります。
九九を正確に速く、流暢に解かせることが大切になります。

絵になる百マスはあり!

百マス計算は陰山英男さんがオススメする学習方法です。経験的にも100問をおおよそ3分前後で解けるようになると3年生でのあまりのないわり算では高得点をとる子供が続出します。
ひき算も百マスで鍛えておくとあまりのあるわり算でも高得点をとる子供が増えます。
百マス計算を一人の教員が40人近く見ることは1回4000問見ているのと同じで厳しいものがあります。そこで、私は絵になる百マスを使います。答えを塗り分けていくと絵が浮かび上がります。
絵が浮かび上がると、子供はますます次の百マスに取り組みたくなるようです。
全体の正誤の傾向は全体をざっとみて絵の仕上がりを見て確認ができます。

百マスは繰り返し九九を想起し書く動作である

7のだんのように、ナナをシチと読むことによる数字の混同があることは、先ほどお伝えしました。この混同を避ける方法が、九九を唱えながら、式と答えを書くことです。
近い効果が見込めることが、百マス計算で答えを書いていくことです。自分の勘違いやいい間違いを何度も直す経験をすることで、九九の数唱から書く力へと変わっていきます。
経験上、視覚支援・聴覚支援よりも強力なツールといえます。

九九ビンゴは苦手とする子供にも優しいが力はあまりつかない

ひとつのだんの九九を九マスに書き、ビンゴをする。苦手とする子供には楽しく取り組めますが、1時間あたりの効率は最悪です。最終的には、数唱に近い形で式と答えを覚えなくてはいけないので、興味・意欲づけのために九九ビンゴだけということは難しい。

九九かるたもバラ九九を言わせるよりはあり

指導方法の組み合わせで、バラ九九と九九かるたを併用することがあります。得意な子供や勝ち抜いた子供は、1つ数字の少ない班へ移動。あまりとれなかった人は1つ数字の多い班へ移動。これにより対戦が進むにつれて、得意な子供は得意な子供と、苦手な子供は苦手な子供と同じレベルで競い力を高め合うようになります。しかし、これも九九の式と答えを覚えての話です。

算数の九九の教え方は、子供に合わせた上記のような方法を組み合わせて、苦手とする子供を作らない方法を十分に練ることが大切です。
単調にいつも通り、同じウエイトで同じ指導を繰り返すのは自分が子供なら苦痛です。
あなたはどうでしょうか?
いつも、工夫のある授業で惹きつけられる授業をする先生と学習指導要領というルールに基づき、そこを中心とした子供のない世界。大人受けはするでしょうが、九九を覚えきれない子供はわり算で苦しむことになります。
どうか、子供にとって最善の方法で指導を行なってください。